治験の体験談

治験の募集に応募していたのだが、先方から電話があり、参加の受付ができないと断られてしまった。
理由は、前回、前々回の応募の際の血液検査で同じ項目が基準を満たせなかったからだそうだ。
治験は応募者の中から血液検査の結果で健康な順に被験者が選ばれることになっているのだけど、2回連続で同じ項目がエラーになった俺はもう今後はエントリーすら出来なくなるらしい。

若い頃からずっと血液検査は全項目クリアーで、他の人達が「γ-GTPの数値がやばい」などと自虐しているのを尻目に一人ほくそ笑んでいたのだけど、人一倍健康体であるという自信が崩れ去る時がとうとう来てしまった。

エラーになった項目自体は直接的に健康がどうこうというわけではないという話だったが、自分でググってみても原因が何とか、値が悪いとどういう影響があるとか特に書かれておらず、単に血中のホルモンの関連の値ということしかわからなかった。
まあ、加齢の影響によるものだろう。地味に凹む。

テンションの下がる前置きから始まったが、今回は治験についての話をしようと思う。
ニートのマシュマロを送ったときにもコメントで「治験オススメ」と言われていたが、個人的にも同意で、ニートに治験はおすすめである。
指定された日数、病院で寝てるだけで1日あたり2万円とかもらえたりする。
しかも長い試験だと日程は2週間×2回とかあって、実際に俺も30万以上もらえたことがある。

ずっと安静にしておく必要があるので病院から出られないとか、頻繁に採血されるとか、大部屋に集団で入れられるとか、規則正しい生活をする必要があるので決められたものしか食べれないし就寝は23時で起床は7時とか、そういう部分は社会不適合者のネット廃人には若干辛いかもしれないが、用意された食事を食べてダラダラしていればお金がもらえるというのは極楽である。あまりに規則正しい生活をするので退院する頃には健康にもなる。
俺が行った施設には漫画がたくさんおいてあって自由時間には読めるし、PC持ち込み可でフリーwifiもあるので暇を持て余すこともなかった。

ところで、これを読んでいる人が一番気になるのは健康被害のことだろう。
一般的に治験と言えば、怪しげな薬物の人体実験とか、繰り返し行っていると身体がぼろぼろになるとか、医療関係者なら絶対知り合いには薦めないとかそういう話をよく耳にする。
そのあたり、自分の体験からすると大体は面白がって過剰に言っているだけじゃないかと思う。

というのも、まず理由の1つとして薬に関しては必ず医師から事前に説明がなされるようになっている。
どういう病気の治療薬なのか。過去にはどういう対象に投薬されたのか。それらの試験の結果(副作用が出た件数や症例)といったようなリスクに関する情報を聞いた上で、参加するか辞退するかは各自判断するようになっている。

今までの経験だとジェネリック薬品のケースが半分くらいだった。つまり、後発で廉価版の薬を作るのだけど元の薬ときちんと同じ働きをするのか調べる目的の試験ということだ。このケースだと少なくとも「怪しげな新薬」ではないし、薬の内容によっては副作用はあるにしても一回飲んだだけで内臓がやられるようなことはちょっと考えられない。

ただ、たまには危なそうな試験のケースも有る。
精神科の薬のときは流石にちょっと不安だった。しかも段階としては動物実験が終わったところで人間への投薬は初めてだという。
うろ覚えだが「不安障害の原因になる脳内のセロトニン受容体の異常を抑制する」みたいな説明をされたたと思う。
そのうえ、サルの実験で起きた副作用の例として無気力になって口から涎をダラダラ流したりとか、逆に凶暴になって異常行動をした例が1000件のうち数件あった、みたいな説明をされた。なにそれ怖い。
ただ、それはある程度の容量を継続的に投与した場合にしか見らなかったことで、今回の試験ではそもそも「薬の効果が出ると予想される量の10分の1だけ」投与して様子を見るという話だった。かなり慎重に様子を見ながら進めていく計画だ。
少ない量からスタートして様子を見ながらちょっとずつ量を増やしたケースを進めていき、合計10回くらい試験を行って安全か判断するらしく、その1回目の試験ということだった。だったらどう考えても安全そうだ。むしろノーリスクと言ってもいい。

それから、どの試験でも共通した話なのだけど、比較のために被験者のうち数人は偽薬(プラセボ)を飲むことになっている。
このケースで言えば被験者に選ばれるのは6人となっているのだけど、うち2人が飲むのは何の薬効成分もないブドウ糖か何かの塊なのだ。
陵辱系のエロゲでよく媚薬と偽って使われるアレである。
これはどういうことかというと、仮にその被験者に同じ異常が出たとして、偽薬を飲んだ人までなってるんだったらそれは薬のせいじゃなくて環境的な要因で起きたことだと判断できる、みたいな話だと思う。
もちろん6人のうち誰が偽薬を飲んだのかは被験者側には絶対にわからないようになっているわけだが、1/3の確率で完璧に安全というのは若干お得感がある。

まあこの辺りのことは治験をする側から与えられる説明なので、疑り深い人からすると上手いことを言って騙しているのではと思う人もいるかも知れないが、俺がそんなに危なくないだろうと思うもう一つの理由は自分が実際に何度も継続して治験に参加できていたということだ。
冒頭でも説明したとおり、治験は応募者の中から健康な順に参加できる。試験の基準は結構厳しく、数日前からアルコールや運動は禁止、当日は水をたくさん飲んでくるようになど細かく指示されたりもする。基準となる項目は30種類くらいあるらしく、そのうちどれか一つでも外れていたら不合格になる。
かなりの健康さが要求されるので病院側も健康な応募者の確保には結構気を使っているようだ。昔は選考に落ちたあとわざわざ「今回ちょっと基準に合わなかったけど、ぜひ次回別の試験にまた来て欲しい」と言われたこともある。
なので、もし本当に投薬で身体がボロボロになるんだとしたら何度も参加できているはずはないと思うのだ。
まあ、最近になって参加できなくなった理由がいつかの治験が原因でないとは言い切れないのだけど…

あと、怖いなと思う話としては、どの治験でも毎回のように言われることとして「投薬後3ヶ月は必ず避妊してください」と注意される。
というのは、生まれてくる子供に何らかの異常が起きるかもしれないから(試験が原因だと訴えられたら完全に否定しきれないから)ということらしい。避妊も何も、そもそも子作りする予定がないので俺には関係ない話ではあるがこの説明は毎回怖い。

あと、一度だけ治験が終わって数ヶ月経ってから急に「書類にサインしてもらいたいので病院まで来てもらえますか」と電話がかかってきたことがある。病院まで片道1時間半くらい距離があったので「面倒なんで郵送でもいいですか?」と答えたところ相手は困った感じで「ちょっと検討してみます」と通話を切り、その後更に数ヶ月たってから「謝礼をいくらかお支払するので病院まで来てサインして欲しい」と再度連絡があった。
怪しい。
何の書類なのか聞くと、「書類の様式が変わってしまって一度サインしてもらったものをもう一回書き直してもらわないといけなくなった」的ないまいち要領を得ない説明しかされなかったのだが、断る理由もなかったので了承して病院に行くことにした。どうせニートで毎日暇だから時間はいくらでもある。
病院につくと、事務員という感じではなく白衣を着た女医がわざわざやってきて「こちらのここに、サインをお願いします」と、なんかやたら細かい字がたくさん書かれた書類を差し出してきた。
俺はその書類に何が書かれているか確認したほうが良いと思ったのだが、書類は女医が手に持ったまま俺に渡してくれず、「ここに書いてください」と指差してやたらにプレッシャーを掛けてくるので相手の押しに負けて内容を確認せずにサインをしてしまった。
すると女医はにこやかに微笑んで俺に謝礼を渡して去っていき、要件はものの2分で終わってしまった。
こころなしか、その間他の職員も遠巻きに様子を見守っていたような気がする。
アレは一体何だったのだろうか・・・時期的にはもう5年以上前の話で、その後何か自分の体に異常が起こったということもないのだが・・・
未だに思い出すとゾワゾワするのでこのことは極力考えないようにしている。

 

結論:治験に参加するかどうかは自己責任で判断しよう。